さて、その②です。
高桐院はなにはなくとも、「楓の庭」と呼ばれるお庭が有名です。
苔むしたお庭に灯篭と楓の木が数本あるだけのお庭。
それだけにふわ~っと気が軽くなるような、いい気持ちになってしまいます。
雨上がりのひんやりとした空気もいい。
幽玄、侘びさびの極み、といった雰囲気です。
庭先で抹茶を飲むこともできます。
ゴールデンウィーク真っ只中でもあんまり人がいないのうれしい。
梅雨時期はさらにいいでしょうね。
雨の似合うお庭です。
青の静寂。
苔と楓の組み合わせだけなのに、なんでしょう、この空気感。
苔の柔らかな風合いと楓の繊細な枝ぶり、サラサラとした葉が落ち着く。
最初に5分ぐらい、ただ庭の前に座ってみてください。
30分でも1時間でもこのままでいられるなーって気になってきます。
腰を上げるのが億劫になってきます。
部屋から庭を臨む。黒のフレーミングが一層庭を引き立てます。
楓の先に歩いて行っちゃうと、そのまま違う世界に行っちゃいそうです。
さて、そろそろ行こうか。
縁側をぐるっと歩き回れます。
この小屋なんだろう。
過ごしやすそうなお部屋です。
この建物が高桐院。
掛け軸。一羽のウグイスが啼くと、山は更に幽玄さを増す、
みたいな意味でしょうか。
というか、それよりもウグイスが絵になってるのがいいですね。
庭から庭へ。庭から見るお屋敷もすばらしい。
楓の庭だけじゃないんです。
ほかにも素敵なお庭があります。
これはこれでかなり上等なお庭です。
こちらは細川忠興が好きだった「袈裟形のおりつくばい」
そしてこの「おりつくばい」の説明がすごい!
想像すると笑えるので原文ママで。
袈裟形のおりつくばい
この浄水盤は、加藤清正が朝鮮王城羅生門の礎石を持ち帰り、
細川三斎公に贈られしものなり。
地面深くおさめらているので、おり蹲踞と呼ばれている。
三斎は、燈籠と共に愛用し、熊本、江戸間の参勤交代にも
持ち歩き、八十才の時に当院におさめられしものなり。
このおり蹲踞と燈籠を持たされる担当たちがかわいそう。
「うわ、マジかよ! オレ、おり蹲踞運ぶ担当!?」
「おれ大丈夫! あぶなっ! え、オレ燈籠なの?」
的な会話あったんだろうなあ。
でも殿様には言えなかったんだろうなあ。
「超高速参勤交代」とかだったら終わるなあ。
と、歴史ロマンにしばし心奪われます。
庭をさらに進むと細川家のお歴々のお墓があります。
ちょっと神妙な気分に。
こちらの燈籠にも伝説があります。
千利休からもらった細川忠興がとても気に入っていた燈籠だったが、
秀吉の目に止まり、欲しい、と言われてします。
そこで、忠興はワザと燈籠の一部を切り落として、傷をつけてしまったので、
とてもお渡しできるようなものではありませぬ、と断ったという。
なんとも、数寄者なり。
すごい執念。
いまで言う、コレクターだったんでしょうね。
うーんまさに変人の館、それが高桐院。
ふー。というわけで高桐院をあとにしました。
と、壁を見ると…。
おわっ!! 東山魁夷の「寺の壁」って大徳寺だったんだ!
知らないで見たからびっくりしたー。
なるほど京都のアラベスクですな。
補強の意味と当時の職人さんのデザインセンスの両立、感服します。
こっちの壁は下のほうが薄緑できれいだなー。
苔も計算して作ってるのかな。
ルイ・ヴィトンもここからでしょうね。
大徳寺の職人さんのセンスは時代を、そして洋の東西をも超越していた
という、ものすごい大天才たちです。